NHK朝ドラと私
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この画像はNHK朝の連続テレビ小説「スカーレット」の感動的な場面です。
武志(伊藤健太郎)が母の喜美子(戸田恵梨香)と共に太陽の光に輝くこの皿を満面の笑みで眺めていました。とても感動的な場面で今も多くの方の記憶に残っているようです。
{劇中に登場したこの皿が私が作品提供した「Water and Flame」と言う名の陶芸作品です。}
ドラマでは、主人公の喜美子の夫の八郎(松下洸平)からこの水の景色を陶芸に映し出す挑戦が始まります。そのきかっけになったのは喜美子の師匠:火鉢の絵付師・深野心仙(イッセー尾形)から届いた一通の絵葉書でした。
{この絵葉書は(写真参考)私の陶芸作品「Water and Flame」を見て絵画指導の苅谷昌江先生が絵にしたものです。}
八郎はこの”水の皿”を満足に作りあげることができず願いは叶いませんでした。しかし、その思いは息子の武志(伊藤健太郎)に引き継がれ、この皿が完成するまでの陶芸制作の過程がこのドラマの最終章の感動的なメインストーリーとして描かれました。
{この皿の完成するまでの過程と完成し皿の中に入る貫入の案は私の実体験がストーリーのベースになっています。}
●劇中のシナリオではWater and Flameの皿は「水が生きている皿」との名前で脚本家の水橋文美江先生につけていただきました。
●最終回までの10回の放映ドラマのオープニングテロップ(クレジット)に「陶芸指導 畠山圭史」と「武志作品 畠山圭史」として登場しています。
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まずは、私の陶芸作品「Water and Flame」の説明です。
11年ほど住んでいた岐阜県の長良川の夕焼けの遠く光輝く景色と澄んだ水の幻想的な情景がとても心に深く響くものでした。
この景色から感じとる“さわやかな気持ち”を表現するために、空気のような肌色の本体の中央に透明な水の色、そしてその水の色の境に太陽の光の色として緋色を入れた取り入れた作品を「Water and Flame」の名で今でも発表しています。
{ロンドンの大和日英基金ジャパンハウスの個展で初めてこの作品を発表しましたが、実はこのロンドンの私の個展を率先し企画していただきながら、個展開催前にお亡くなりになったカービーみち子元在日英国公使夫人への鎮魂の思いが常にこの作品には込めれています。ドラマ「スカーレット」の中でもこの皿を生み出す人物が亡くなる話で”命の尊さ"を表現した感動的な最終回でした。私の経験した追悼の「思い」と相まっていて感銘深いものを感じます。}
そしてこの澄んだ水の情景を表現するために“水のゆらぎ”感を生み出す独自の技法も生み出しました。この技法は細い筆で三日かけて極めて薄い釉薬のグラデーションを塗り上げる独自の技法です。一見写真で見ると、どこにでもあるようなトルコ青のグラデーションの皿ですが、この技法により焼成後は目の錯覚を呼び皿自体が発光して見えるような独特なさわやかな青い色が浮かび上がっています。
{この重ね塗り技術を生み出す過程も私がドラマのストーリー制作に協力し、丁寧に時間をかけドラマで演出され放映されています。}
そして、陶芸技術指導のお話です。
私はこのドラマ「スカーレット」のメイン出演者(戸田恵梨香、松下洸平、黒島結菜、伊藤健太郎)それぞれに長期のマンツーマン陶芸指導をドラマの撮影の入る前に東京で行っています。
{陶芸が初めての皆さんに陶芸家としてしっかり演技できるような手の動き等を”みっちり”指導するようにとのNHKからの依頼でした。もちろん、私には非常に重い責任の稽古ですが、粘土練りから電動ろくろの器づくりまでと皆さん完璧に陶芸の基本を体得し仕上がり”陶芸家として”撮影に入っていただけました。}
そしてNHK大阪撮影スタジオでの伊藤健太郎の陶芸演技指導も長く埼玉から通い行いました。最初の戸田恵梨香さんの稽古から始まったこの仕事はトータル14か月と、とても長い期間このドラマ撮影に携わったことになります。
*伊藤健太郎と私の東京での陶芸稽古はNHKの番組「あさイチ」で紹介していただきました。
*松下洸平オフィシャルInstagramには東京での私の稽古の模様を投稿していただいています。
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